産業科学技術センターでは、次世代産業の育成を目的として、第4期中期業務計画において重点分野を設定し、新素材に関する研究や普及のための取り組みを行っています。
工業化学担当では、環境問題の解決へ貢献が期待される植物由来(非石油系)の軽量・高強度な材料であるセルロースナノファイバー(CNF)の社会実装に取り組んでいます。また、近年のカーボンニュートラルやSDGsの観点から、より繊維幅が大きいセルロースフィラメントにも関心が高まっています。これらのセルロース微小繊維を使った製品化の促進を目的に用途展開事例を紹介するセミナーを開催しました。今回、講師として株式会社エンパシード 代表取締役 博士(工学) 平田悟史氏(元産業技術総合研究所コンソーシアムナノセルロースフォーラム 事務局長)をお迎えし、令和4年10月6日に1時間半の座学を実施しました。
内容としては、①セルロース、セルロースファイバー、ナノセルロース(用語の整理)②ナノセルロースの種類③ナノセルロースの特性④ナノセルロースを使った製品⑤海外で注目されるナノセルロースの用途⑥国内・海外におけるナノセルロースの生産⑦バクテリアナノセルロースに関する話題について講演いただきました。19社・団体28名の方がご参加され、「利点とそうでない点が明確に理解することが出来ました」や「日本だけでなく海外の用途展開について知ることが出来ました」などの感想をいただき、おおむね好評でした。
今回の講演で紹介されましたが、セルロースナノファイバーを含めたセルロース系微小繊維が、欧州や米国および日本など各国や地域で様々な名称で表されているという点については、特許検索や各社セルロース系微小繊維製品の理解の上で注意が必要です。また、CNFは原料や製法で、形状や物性が異なる点にも注意が必要です。
今後もCNFを中心にセルロース系材料について情報を発信していきます。CNFを使った製品開発やCNFについてお知りになりたいことがあればお気軽にお問い合わせください。(工業化学担当 主幹研究員 柳 明洋)